グラッデン

マダム・フローレンス! 夢見るふたりのグラッデンのレビュー・感想・評価

3.9
舞台は1944年のニューヨーク。自らが歌唱するコンサートを開催することを決意したフローレンス・フォスター・ジェンキンスと、彼女の音痴を隠しながらも公演に向けて奔走する夫の2人を描いた事実に基づく物語。

非常に良く出来たお話だ、と感じたところで冒頭に出てきた「実話に基づく物語」というフレーズにハッとさせられる内容でした。それほどまでに型破りな出来事であったと思いますし、特に音楽活動をされている方などには賛否両論のあるのではないかと。。

予告編を含めて事前情報をゼロで見に行ったことから、作品序盤から感じていたマダム・フローレンス(言うまでもなく彼女を演じたメリル・ストリープという意味ではない)の演技や歌唱に対する周囲の賞賛の声に対する「違和感」が、ある場面で解決するあたり、ある種の安堵感に包まれました(汗)

それほどまでに、彼女の音楽に対する愛情の深さと表現力に対する自信を非常に強く感じさせられたからだと思います。

たしかに、作中に登場した新聞記者のように、彼女たちが行ったことは客観的に見れば冒涜にも近いような行動かもしれません。しかし、彼女の間違いなき「純粋さ」がそうした判断を鈍らせ、周囲の人たちを突き動かしたのだという説得力にも繋がりました。

丁度、彼女の歌唱をサポートするピアニストの若者が観客に非常に近い視点だったと思いました。個人的には彼の反応と心情の変化に強く共感しました。

その意味では、作中において、ある種の逃げ道として用いられた言葉ではありましたが、見終わった後に「音楽を愛する心」の大切さを改めて感じさせる作品でした。