グラッデン

ファブリックの女王のグラッデンのレビュー・感想・評価

ファブリックの女王(2015年製作の映画)
3.6
世界中に展開されるフィンランドのアパレル会社・マリメッコの創業者であるアルミ・ラティアの生涯を描いた劇中劇を通じて彼女の人生や考え方に触れる作品。

まず、年明けから相当な回数見てきた予告編では意図的に隠された劇中劇という作品構造に驚かされました。ただし、戸惑いは覚えたものの、1人の人物像に迫るという観点で考えると良かったのではないかと思いました。特に、監督がマリメッコの元役員ということもあり、簡単には言い表せない、彼女の複雑な人物像を上手く伝えたいという意図だったのではないかと考察しました。
また、舞台演出というかたちで披露される色彩の豊かさマリメッコの衣装とモデルたちのパフォーマンスは素敵でした。普通のシチュエーションでは違和感をおぼえてしまぃすが、舞台の表現と考えますと自然に見えてきますので、これも設定の良い活かし方だと思いました。

次に、作中で演じられたアルミですが、小島慶子さんが作品紹介の雑誌記事で「こんな上司ムリ」とコメントを残すのも納得の強烈なキャラでして、ドン引きでした(汗)正直、男性目線で述べると旦那さんに激しく同情するほど、RIHUZIN=理不尽極まりないです。。
しかしながら、そうした破天荒さに呆れる一方で、彼女の行動や発言を突き動かす理想への強い思い、内面に隠された弱さの双方を垣間見ることができます。強行突破に近いかたちでも理想に向けて邁進しながらも、どこか打たれ弱い存在でもある。その二面性に戸惑いさえも覚えました。

アルミはマリメッコを作り、ファブリックの女王として君臨しました。自身の王国とも言えるマリメッコが破綻しかねないくらいキリキリの状態でも、自身の理想や望みを貫こうとするくらいなので、良い女王ではなかったのかもしれません。しかし、それほどまでの意志の強さに惹きつけられた人間も多かったのではないかと。君主とは善人である必要はない。。