今年4月2日に他界したオリヴェイラ監督。恐らく、それもあってこの作品は日本上映が決まったのではないかな、と思われる。
『アンジェリカの微笑み』の2年後に作られた『家族の灯り』はすでに公開されていたし、本作は一見すると地味過ぎるしオカルトと受け取られ兼ねないお話&演出だし、普通に上映するのは難しかったのだろう。
この映画自体も1952年にオリヴェイラ自身が脚本を執筆し、ずっと頓挫していた企画が基になっている。58年後に自らの手で撮り直せる、というのはさすが106歳まで監督を続けていたオリヴェイラならではの逸話だ。
肝心の内容は、パッと観ではさらっと終わってしまう軽い映画のように思えるのだけど、パンフを読むと、戦後の傷痕が残る時に企画された意味があったのかと気付かされる。
ある描写で黒沢清監督作『叫』を思い出し、笑ってしまった。個人的にはこういう軽やかさが、オリヴェイラ作品の魅力だと思っている。