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アンジェリカの微笑みのleylaのレビュー・感想・評価

アンジェリカの微笑み(2010年製作の映画)
4.0
宗教的・哲学的な意味を含む死生観?
幻想的なラブストーリー?
101歳の監督が描く死の理想形?
いろいろ解釈できる作品でした。

1952年の自作の脚本を熟成させ、2010年現代に書き直した作品。
内容は複雑なようでいてシンプル、知性とユーモアを感じます。そして見事な構図と映像美。

監督が自分の死への準備のために作ったのではないかな?と勝手に思いました。個人的な思いが詰まっているようなので。

フィルマのあらすじが詳しいので割愛。

👇以下、ネタバレ含みます⚠️



ポルトガルのドウロ河を望む夜景に、ショパンの調べ。何度も映されるこの遠景に、監督の故郷愛を感じます。

死人なのに、まるで生きているようにソファに横たわるアンジェリカにまず驚く。死人が目を開き微笑む。ここで、この作品は普通じゃないんだと知る。

モノクロで浮かび上がるアンジェリカの亡霊、空を飛ぶアンジェリカとイザク、鳥が亡くなって導くあの世。幻想的な魂の形です。ちょっとチープなのがより幻想的。

たびたび描かれる畑のトラクターと外のトラックの轟音は、現代や物質社会への嘆きにも思えました。
「古い方がずっと面白い」とセリフでも言っています。

幻想と現実、生と死、この世とあの世など、いろいろが対比として描かれているのが興味深い。繰り返し映すので。

アンジェリカ(死)の写真×農夫(生)の写真
鍬(過去)×トラクター(現代)
モノクロ(あの世)×カラー(この世)
開かれた窓(生)×閉じられる窓(死)
ショパンのピアノソナタ×労働歌

死は肉体のみの現象で、魂は天使(=アンジェリカ)に導かれる新たな旅立ちと思えるラスト。あんなにわかりやすい映像で。笑

100歳を超えて、こんなファンタジーを撮る監督には感服。この後に3作も作り、106歳で亡くなった監督の映画愛とバイタリティには尊敬しかありません。他の作品も観てみよう。


📌MEMO 気になった会話など

「天使が天国の門を開く」
この言葉のように、イザクはアンジェリカ(=天使)にあの世に招かれた。

「黙示録の7人の天使」の話。
鍬を持った農夫が7人いた。鍬は鎌に変えると死神?写真の形相も死神っぼい。

「物質と反物質」の話。
人間は物資、魂は反物質と言える。

何気ない会話がすべてイザクにリンクしているお見事さ。
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