えいがドゥロヴァウ

友だちのパパが好きのえいがドゥロヴァウのレビュー・感想・評価

友だちのパパが好き(2015年製作の映画)
4.3
鑑賞後の充実感!
ニヤニヤが止まりませんでしたよ

映画配給会社で働いていた頃に映画デビュー作『ミツコ感覚』の宣伝をお手伝いした関係で知った山内ケンジ監督
『ミツコ感覚』でコメント取りした宮崎吐夢さんが出演していた!
しかも超キモい役!笑

CMディレクターとしてU.F.O.の「ヤキソバン」やソフトバンク「白戸家」、静岡限定のローカルCM「コンコルド」(とても面白いので良ければyoutubeなどで見てみてください)など話題作を多く手がけ
自身主催の演劇ユニット「城山羊の会」の作品が昨年、「演劇界の芥川賞」と呼ばれる岸田國士戯曲賞を受賞
『ミツコ感覚』の宣伝時に演劇も観させてもらいましたが
何気ない日常の不条理な側面をあぶり出す作風は一貫していて
中毒性の高い作家さんという印象です
既成の通念を変質させることの面白みが、山内さんの作品では存分に味わえるのです
水の中に墨汁を一滴垂らすような
ジワリとドス黒いものが溶け込んで全体の色が変わっていく感覚
(そもそもその水自体がゴミが混じっていたり、そんなにキレイなもんじゃないんですけどね)
喜劇ですが、当事者にとっての悲劇=傍観者にとっての喜劇として描いていて
僕が大好きな吉田戦車の漫画、特に「伝染るんです。」の後ろ暗くも可笑しいムードに通じるものがある気がします

タイトルとビジュアルの可愛らしさに誘われてか
後ろに女子高生と思しき2人組の女の子が座っていて
彼女らの鑑賞後のテンションが心配になりましたが
ケロッとどこのカフェに行こうかなんて話をしながら出て行きました
感想聞いてみたかった…
この映画はたしかに「純愛映画」で
純愛ものは女子高生の永遠の大好物だと認識していますが
本作は「純愛」というものが如何にグロテスクであるかを描いた映画です
『ミツコ感覚』で主人公ミツコをストーキングする三浦の存在のように、山内監督は冒頭に「異物」を投入することによって物語を始動させます
本作におけるその異物とは「友だちのパパが好き」だという「純愛」そのものなのです

劇中の音楽はタイトルとエンドロールのピアノ曲のみ
固定カメラの長回しで役者さんの生々しい演技と脚本の力をじっくりと見せる添加物フリーなスタイル
『ミツコ感覚』もかなり面白かったですが、より観やすくなったと思います
もっともっと撮ってほしいですね