もしも現代ドイツにヒトラーが蘇ったら…というワンアイディアで勝負するドイツにしか作れない、笑えるけど笑えないコメディ。ハリウッド映画の悪役の定形として恐るべきアイコニックと化したあのヒトラーがヒトラーとして第2の人生を生きる。『スポットライト 世紀のスクープ』しかり世の中にはわかりやすい悪人という役割はないことを示し、悪とは凡庸なことを突きつけてくれる。
｢まさか本物なわけないやろ…｣という緩慢な油断が見る見るうちに人々を虜にしていく。ドラマパートは若干たるいなーと思ったがラストスパートが入れ子構造で好き。モキュメンタリーチックなところは実際に一般の人と撮影したと聞き恐ろしいくらいの出来に納得。わかりやすい『BTTF』『ヒトラー最期の12日間』オマージュに笑う。
その国でしか作れないという意味では『レッドファミリー』も想起された。
やはり映画は社会を映す鏡だなと思うし、音楽ではないにしても程度の差はあれ政治的なものだなーと思う。
翻って我が国は～とか言いたくないし、そういう文脈で映画を語るのは主義に反している。ねがわくばずっとそうでいたい。
