Mila

パーティで女の子に話しかけるにはのMilaのネタバレレビュー・内容・結末

4.2

このレビューはネタバレを含みます

私たちが二度と味わえない完璧な青春

遠い宇宙からやってきた美少女ザンは、キスもすればゲロだってする。それなのに、でもそれだからこそ、素直で嘘の無いザンとエンの愛は、今まで見た中で最高に綺麗だった。お互いに常識が通用しない世界で、心のままに触れて、認めて、愛して、壊して、叫んで。十代の私の心はぎゅうぎゅう詰めの電車、からっぽのお財布、無関心な親とそのコントロールに麻痺してたくさんのものを諦めて、叫ばずに、叫べずに十代を終えてしまったことに気づいた。もっと触れて、愛すべきものがたくさんあったのに、求める気力を失っていた。私は、高校生までアイスさえ母の許可なく食べたことがなかったし、唯一ずっと読んでいるマンガを部屋に置くこともできなかった。だから、自転車を3人乗りして、ポテトを壁に投げつけて笑いあって、テクニックも構成も気にせずに不満を歌に乗せて叫ぶ彼らが、目をつぶりたくなるほどうらやましかった。でも、ふたりの軌跡を「完璧な青春」にしたのは、それがただパンクだったというだけではなくて、”I love you.”のきらめきを支えに新たな価値を生んだところだと思う。あんな風にこどなからおとなになれたら。はたちを超えて、来年社会人になる私にはもう、「とりあえず叫ぶ」という選択肢はない。建設へたどり着く前にエネルギーが足りなくなったら、また代わりにザンとエンに叫んでもらうしかない。

最後に、本作も最高にキュートなエルファニングちゃんの、大胆な決断とますます魅力を増す虹色の表情にお腹の底からありがとうを叫びたいのだけど、近所迷惑になってしまうから、代わりに公開前にポスターを見て買ってしまったグレンチェックのコートを大切にしようと思う。
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