昇り龍天覚寺

パーティで女の子に話しかけるにはの昇り龍天覚寺のレビュー・感想・評価

2.7
とんだタイトルとメインビジュアル詐欺(笑)
てっきり「冴えない僕と奔放な彼女」系の恋愛映画だと思ったら…まさかの彼女は宇宙人!
とはいえ、「宇宙人の彼女をパンク好きの冴えない僕が知らない世界へ連れていく(あるいは救出する)」というのも青春映画としてはベタなストーリーラインではあるので、それもそれでいいなと思ったが…う〜ん。

大体、宇宙人のイメージがビニール素材のピチピチの60年代風のワンピースを着て、ファッションショーやコンテンポラリーダンスやヨガもどきのことをやってるってのもどうよ。スタートレックから来てるのかな?または限られた予算で「奇妙な集団」を表現しようとしたらああなるのか?
まあ、クレイジーでカオスといえばそうで、映像も斬新といえばそうなんだけど(悪趣味すぎる部分もあったが)、とにかく話のテンポが遅すぎる。

あと、恋愛要素として?ザンがエンといちゃつくシーンが多めに挿入されてはいるんだけど、あくまで肉体的接触のみだから、二人の絆であったり恋愛感情であったりっていうのが見えてこない。
ザンの心がエンと出会うことでどう変わっていったか、というのもいまいち伝わらない。チューばっかして一緒にトマト食ったって変わらないだろ別に。
ニコール・キッドマン演じるプロデューサー?も意味不明。虚言癖なのか?有名人と寝たことだけが名誉の哀れな中年女?ひたすら意味深なことを言ってるけど意味がわからない。

つまり誰一人にも感情移入できず、そしてストーリーラインというものが存在せず、なんだか目的も行先も不明瞭なまま、悪趣味な(先鋭的な)映像が挿入されつつ話があちこちに行きながら展開されていく。無駄な回り道をしまくるドライブ(しかも最終目的地はいつまでも見えない)に助手席で付き合わされて酔ってしまったような感じだ。

ザンのコロニーが食人種であること、そしてザンがエンの子供を妊娠したこと、あらゆることがさらっと台詞で説明されて次の瞬間には受け入れられてる。ただでさえ複雑、というかカルトでサイケな内容を売りにしてるんだから、せめて説明は丁寧にしてくれよ!という感じだ。
そしてエンの子供を地球で産む(コロニーと決別する)か、コロニーで出産する(エンと決別する)か選ぶシーンなんて、きっと一番視聴者に揺さぶりをかけるシーンであるはずなのに、エンとザンに、そして宇宙人サイドにも一切感情移入できてないので「は、はあ…」という感じでしかない。
ザンがエンとこの世界(地球)を愛していく様子の描写がかなり雑だし…。
雰囲気映画は雰囲気で察して分かった気になってろよ、それがパンクだってことか?

でも、ザン(エル・ファニング)がひたすらに可愛い。とにかく可愛い。彼女の可愛さでなんとなく画面が持っている。それだけ。

青春映画というにはあまりにカタルシスがなく、恋愛映画というにはあまりに感情移入できず、SF映画というには設定が練られておらず…なんか、雰囲気はいいんだから、同じ題材でももっとうまくやれたと思うんだけどなあ。