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ジョン・F・ドノヴァンの死と生のモミジのレビュー・感想・評価

3.8
ドランの中で一番わかりやすいと聞いたのでついに観ました、ジョン・F・ドノヴァン

「若手人気俳優のジョン・F・ドノヴァン!
人気絶頂の俳優人生とは裏腹に、彼は底のない孤独感に苛まされている
なぜなら彼はファンの目という監視に恐れて、俳優として役を演じるより前に、俳優ジョン・F・ドノヴァンを常に演じていた
彼の心の休まる場所は、秘密の恋人の隣と、異国の子供と隠れて文通していることだけ
本当の自分が帰る場所が欲しかったが、俳優としての自分が保身のために、築きかけたそれを壊してしまう
自分の犯した過ちが現実となって降りかかり、自らの存在意義を失う
自分のことを理解してくれている人間も、自分が理解している人間も、どこにもいない。自分の居場所なんてどこにもない、自分がこの世界で生きる意味は?」
という感じの内容です、ざっくり

表面的には公私の隔たりを上手くコントロールできなかったために生まれた悲劇です
本質的に人付き合いが苦手なんでしょうね、ドノヴァンは。だから数少ない本当に仲良くしていると思っている人に対しても、俯瞰で見ると利己的に動いてしまってるからこういった悲劇が起きた
ただ、最期にはそんな自分自身を理解できたみたいだし、最終的にルーカスも彼の本心を理解していましたから、彼は不幸ではなかったと思います。自己理解さえできてれば人間どうとでもなりますからね

それに、この映画の特徴ですけども、ゲイを異端なものとして描写したり、表面だけ見て即理解できるようなわかりやすい演出、選曲面でもグリーンデイにアデル、the verveといったUSヒットチャートのオンパレード…こう言っては何ですけど「らしくない」感じですよね
ドラン自身が自分の味を消して、こういった「映画っぽさ」を演出していくことも、本作テーマの自分を偽るということに繋がっているんでしょうかね
というか、初英語監督作ですもんね。
このまま個性ビンビンの作家主義でキャリアを終えるのか、それとも大衆に寄り添って理解しやすい映画を撮る方が良いのか悩んでいたとしたら、今作は二人の主人公を介して、監督自身の苦悩を描いた映画とも言えそうです
わかんないですけどね、妄想です
だけど、そんな感情を脚本と両立して表現するなら、ジョン・F・ドノヴァンは最適な映画でしたね
生と死、光と影、本心と虚心
だから、ドランは自身初の英語作品という大舞台にカチコミを入れにいく映画としてこの題材を選んだのかもしれません
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