カネコ

ジョン・F・ドノヴァンの死と生のカネコのレビュー・感想・評価

4.5
2006年1人の人気TV俳優が夭折した。
彼の名前はジョン・F・ドノヴァン 。
彼は11歳の少年と死の直前まで文通をしていた。
10年後成長した少年ルパートは人気俳優となっていた。そして当時の文通の内容を書籍化。物語はルパートが少年時代を回想する形で彼とジョンの当時の思い、闇を紐解いていく。

セクシャルマイノリティ問題、スターの栄光と挫折など描かれているけど惹かれたのはジョンとルパートの母と子の物語。

ルパートは母との衝突を避けてジョンと文通している事を5年間隠し通していた。
俳優になれずシングルマザーである母は自分の夢を息子に託している。こういう母親像はありふれた設定ではある。
でもジョンが問題を起こした時に2人がお互いの気持ちをぶつけ合うシーンは迫真で、私も母親であるからいつか息子とこうやってぶつかり合う日が来るのかと他人事とは思えなかった。
ナタリーポートマン演じる母の葛藤とか息子に対する行動が自分に既視感あってつい感情移入してしまった。
ルパートの作文からのStand By Meが流れるシーンはベタだけど泣けた。

ジョンと母親の関係はもっと拗れていて。
ジョンの母はちょっと酒乱気味で自分を避けているジョンに皮肉を言ったりしている。ジョンはそんな母に自分がゲイである事をカミングアウト出来ていない。
と言うかカミングアウト出来ない事が2人に壁を作っていたのかも。
ラスト付近で全てを失ったジョンに親友では無いけどあなたの事は誰よりも分かるというジョンの母は”母親とは親友同士”というルパート母子の関係とは違った形の絆があった。

ラストシーンの青年ルパートが恋人とバイクに乗るカットはリバーフェニックスの”マイ・プライベート・アイダホ”のオマージュと聞きそちらも観直してみたらこの作品自体が”マイ・プライベート・アイダホ”とリバーフェニックスへのオマージュと愛に溢れてた。

ジョンが車の中でラジオに合わせて歌う Green Day のJesus Of Suburbiaの一節
“Soda pop and Ritalin “=ソーダとリタリンのリタリンはマイプライベート〜でリバー演じるマイクが患っていたナルコレプシーの治療薬。
マイクはストレスかかかると突発的に眠ってしまう症状だった事。
ジョンの最後の手紙の言葉”僕には眠りが必要だ。ひたすら眠りたい。そしてやり直す。”※

マイクはキアヌリーブズ演じるスコットと自分を捨てた母を探して旅に出る。マイクは母と会えなかったけどジョンとルパートの母との関係がマイクに対するアンサーになっている気がしてエモさを感じた。

作中の音楽もセンス良くてOPもEDも良かったけどジョンが家族とお風呂で歌うLifehouseの”Hanging By A Moment”が切なかった。

オープニングAdele – Rolling in the Deep
エンディングThe Verve - Bitter Sweet Symphony


“時は一瞬で永遠”


劇中ドラマのヘルサム高校ってゴシップガールみたいなノリのドラマかと思ったらヒーローズだったのは笑った。


※この最後の手紙とジョンのレストランでの老人との会話はルパートの創作かなと思ってる。
ルパートは最後までジョンに希望を持っていて欲しかったから手紙の内容を自殺では無かったように少し脚色したんじゃないかな。ルパートは文才があったし老人の存在が謎で浮いてる感じがした。
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