せき

ジョン・F・ドノヴァンの死と生のせきのレビュー・感想・評価

4.7
子どもの頃、家で過ごす時間が嫌いだった
顔を合わせれば毎日のように喧嘩をする両親
誕生日も家族での外出も、その様子を強制的に目の当たりにしなければならない時間でただ辛かった

でも仕事をしてご飯を食べさせてくれて、彼らなりに親らしく、家族らしくあろうとしているのだと思うと簡単に憎むこともできない
いっそ嫌いになれれば楽なのに

離婚して母と自分たちが家を出て間もなく、父はいなくなった
自分からそうしたのかも、事故かも分からない
ひとりぼっちで迎えた最期の時に何を思ったか、そんな瞬間すらなかったか

他人の苦しみを理解できることなんて絶対にないけど、宙ぶらりんに残されたルパートも、どこにも居場所がないように思えてしまうジョンも、少しだけ自分ごとのように感じてしまった
だからこそ、希望を見つけかけたジョンの行末を見たかったな

最初から結末は明示されているのに、このどこか優しい余韻はなんだろうと思ったけど、「他の人も自分と同じように孤独だと思うと救われる」っていう序盤の台詞を思い出して腑に落ちた

この感覚をすくいあげて表現してくれる存在がいるってとても嬉しいことだ
せき

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