DUMMY

ジョン・F・ドノヴァンの死と生のDUMMYのレビュー・感想・評価

3.9
孤独を題材にした映画は沢山あるけれども、こんなに丁寧に孤独を描いた作品はかなり貴重なのではないかと……かなり面白かった。
細かく千切られた1枚の絵をそっと丁寧に重ね合わせていくように、一つの物語がじわじわと真相を現していく。
難しい台詞というか、暗喩の台詞も多かったのでもう一度見直したいな〜という印象。

会話のシーンになった時、眉から口くらいの顔のアップが交互に映るカットが多くて、正直めっちゃ窮屈で観づらかった。
ただ、それが目の前で起こる現実への縛り付けのようにも感じたので、そういう意味では効果的だったのかも。
相手の鋭い眼光と耳の奥で木霊するような声、それに相反してぼやける風景……自分が緊張している時の会話ってこんな感じかもしれないよな……と。
例えばマネージャーとの会話のシーンも、敢えて事務所の風景を映すことなくアップだけに留めていて、上辺だけではない言葉の力強さをひしひしと感じた。

ドランの作品初めて見たんですが、同性愛とかって今は比較的映画の題材として定番のものになってきているような。
彼のポリシーとか今まで抱えてきた一生分の苦しみとかを考えれば別にどうってことはないんですけど、同性愛を題材にした安っぽい映画が蔓延して、今後の作品が「またそれか」感の渦の中に飲まれないように祈りたいです。まだその時期ではないだろうけれど。
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