みかん星人

ノー・エスケープ 自由への国境のみかん星人のレビュー・感想・評価

2.6
原題は「DESIERTO」で(メキシコの公用語)スペイン語で「砂漠」のこと。邦題は『ノー・エスケープ 自由への国境』で、ちょっとニュアンスが違う。

そもそも『ゼロ・グラビティー』のキュアロン親子が製作した本作ではあるものの、もしかしたらトランプ大統領が「あんなこと」を言い出さなかったら、日本では公開されなかった映画かもしれない。

ただ、確かに「いま」な場所とプロットではあるが、映画そのものには政治的なメッセージはほとんど感じられない。在るのは「砂漠(とサボテン)の怖さ」と「人間の怖さ」だ。

「砂漠の怖さ」は、『ゼロ・グラビティー』での宇宙空間に匹敵するもので、空気が無い宇宙空間よりは、若干緩やかに干からびてゆくという、ヒリヒリする感覚がある。とはいえ、映画の中では取り立てて「水が無い!」みたいな描き方は無くて、観客の想像力を頼りにしてヒリヒリ感を生み出している。

「人間の怖さ」は、一言でいえば「対サイコパス戦」というもので、「不法行為をしている我が身ではあるけれど、それは理不尽だろう!」という憤りが、ひしひしと伝わってくる。

『ゼロ・グラビティー』でもそうだったように、この『ノー・エスケープ』でも、音楽がとても饒舌だ。エンドクレジットでも弦楽器奏者が多く書かれていたが、不安を掻き立てられる音楽にしっかりとやられてしまった。

「いま」の映画として観るには、いろいろと勉強が必要だろう。そもそもどーして不法に越境するメキシコ人がたくさん居るのか、とか、それを阻止しようとする、ある種の自警団の存在、とか。。。
でも、そういった「いま」を学んで観る映画としてよりも、
「とある場面設定の中で、人はどう考え、行動するのか」
という人間の本質を、それとは無関係に存在する自然の中で観察する、そういった映画だと思う。
みかん星人

みかん星人