オキラム

メッセージのオキラムのレビュー・感想・評価

メッセージ(2016年製作の映画)
4.6
SF映画というものに勝手に機械やテクノロジーの進んだ近未来的なイメージを描いていたが、この作品はそういう雰囲気ではない。

確かに世界中の空に現れた謎の物体には私たちでは遠く及ばない科学が組み込まれていたようだが、映画の主軸はそのテクノロジーについてではない。そんなテクノロジーを有するエイリアンが、なぜ地球に現れたのか、一体何が目的なのか、言葉の通じないエイリアンとコミュニケーションを重ねて彼らを理解しようとする、交流こそが物語の主軸であるように思う。

この映画はアメリカでエイリアンとの交流を任された主人公ルイーズの視点で描かれている。彼女は始めエイリアンに恐怖する。しかしそれを圧し恐る恐る交流に踏み込む。その恐怖も緊張感も、彼女の目を通して私達に伝わってくる。エイリアンが意思をもって交流を返し、彼等がコミュニケーション可能な思考生物なのだと分かると、次第に彼らへの恐怖は薄れ、交流が広がりを見せていく。

言葉の理解を通じてだんだんと彼等の価値観を垣間見るルイーズは、彼女自身の価値観も揺らがされる。その動揺が余すところなく私達にも伝わり、彼女と共に揺れ動かされる。そうしてエイリアン達の価値観を通じて繋がっていく物語のラストにはとても感動した。

映画をこんなにも感情輸入して見るのは久しぶりだった。そして何度でも観たい。情緒的であり詩的であり、そして優しい、とても良い映画だ。
オキラム

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