前評判ほどではない、みたいな感想が多かったのでどんなもんかしら、と思ってたけど文句無しに名作だった。
いちばん最後のやり取りが今の自分に刺さりすぎてもうやばい。
未来に何が起きるか分かってしまっているからといって別の人生を選んで歩むことができるのかどうか…。
分かってしまうからトラブル回避のために努力する、というような物語はありがちだ。しかし人生というものはそんなに一面的ではない。どうせ失敗すると分かっていても辛い思い出だけが残るわけではなくて、幸せな得難い思い出とも地続きになっているわけだ。考えてみたら当然だけど、フィクションでは見落とされがちな真実。幸せな思い出を捨ててまで自分の失敗を避けることができるのか…という構成は今までの感覚的な常識を覆す見事な出来としか言いようがない…。
でもいつだって過去を変えてくれるのは未来だけだから地球に生きる私たちにとっても同じかもしれない。
私たちだっていつも自分の未来を想像しながら生きてる筈だ。だからどうせ別れなくてはいけない相手だと思っていても芽生えた感情をなかったことにはできなかったり我慢できなかったりする。例えうまくいかなかったとしても過ぎた過去を振り返る時間は一瞬であり永遠だ。
時の流れは不可逆じゃない。直線じゃなくて現在だけに結束する点なんだ。
