EruMi

メッセージのEruMiのネタバレレビュー・内容・結末

メッセージ(2016年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

映像や音響はこれこれ〜という感じで良かったです。光が眩しくて、木や草の音がして、懐かしい記憶みたいなスナップショット的な例のあの切ない感じのやつ。これこれ〜もうすぐ泣いちゃう。
エイミーアダムスの演技も良い。
しかし、原作のファンとしては、映像版独自の、分断の時代とでもいうべき現代の世相を反映した要素、これを入れるのは2時間とか観客を惹き付けるのに絶対必要な要素だと思うので全然構わないのですが、この要素とこのお話のキモである、時制が消失して過去も未来も全てフラットになる、ということが絡み合うことによって全然ちがう結末になっていることに違和感がありました。
なぜなら、原作では未来が見えるからといって未来を変えられるわけではない、という話だったはずで、変えられないけど見えてしまうその悲しみと、それでも全てを遂行するんだ、という意思の力に対して感動する話だったはずで、しかし映画版は未来の情報から現在を変えてしまいますから、これだとただの超能力者が、悲しい未来をハッピーに変えて良かった良かった、旦那とも別れなくて良いし娘も死なないね、やったーで終わってしまいますし、これが全人類に波及して戦争がなくなり人類は次のステップに進む、的なことだと「幼年期の終わり」がちょっとスケール小さくなったみたいな感じで…
私は革新的でありながら至極個人的なお話として語り切る原作の方が圧倒的に優れていると思いました。

と、思いましたが、例えば「幼年期の終わり」を1950年代に絶対に映像化はできなかったはずですし、しても恐らく多くの観客には理解できなかったでしょうから、幼年期の終わりのような未来像を映像で見せられるまでに人類は進化したのだと考えれば、やっぱり凄い事なのかも知れません。
いや、凄い事なんだと思います。
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