ヘイヘイ

メッセージのヘイヘイのレビュー・感想・評価

メッセージ(2016年製作の映画)
4.7
鑑賞後にテッド•チャンの短編原作(あなたの人生の物語)も読了。

ドゥニ•ヴィルヌーヴ監督(名前大丈夫かな?)の中では現状これが1番好きな作品です
プリズナーズ、ボーダーライン、灼熱の魂もよきです。複製された男は意味わからんけど好きです(解説みて理解はできました)

どんな作家性の監督か?と聞かれるとなんと答えればいいかちょっと困る。。
個人的には、どの作品でもリアリティラインがはっきりしていて、SFであってもとても現実的なお話にもってくなぁ、と。そこが好きです。

日本では、“ばかうけ”と宇宙船の形が似ているということで、話題になりました。が、宇宙人との侵略戦争!スーパーアクション!ていうベクトルの作品ではないので、ポスターだけ見て行った人は、映画館でズコーッてなったかと。

私は、マレーシア出張時に現地で観たのですが、1時間くらいで帰る人がちらほら見受けられました。
ちなみに、マレーシアの映画館では、音声は英語でしたが、中国語とマレー語?の2つの言葉が字幕で出てました。
(英語作品以外だと、字幕は英語も追加されて3つになるようです、多民族国家すごい!)
しかも、料金が日本円で400円位?ですごい安かった記憶があります。
客席も縦長ではなく、横長になっていて不思議な感じでした。

そして例によって、インセプションの現地鑑賞時と同じく、大体わかった気になって帰国し、劇場で再見したところ、理解できていない新情報がたくさんあって、ビビりました。(いや、この映画も字幕なしは難しいよ。。)

以下は、鑑賞した人向けのネタバレ含みます。


























使用する“言語”がその人の思考、思想、価値観の根源となる、という考え自体は、なるほどなぁ、と。(虐殺器官とかメタルギア4にもこういうモチーフありますね)

確かに英語は、主語と述語は近接するので、伝えたいことが明確です。ステレオタイプかもしれないですが、彼らはやっぱり日本人よりもハッキリとした性格であるような印象受けます。

そこを更に発展させ、始まりと終わりのない文法があって、彼らは終わりも始まりも同時に見えている=過去、現在、未来が同時に経験している、というアイデアには痺れました。

宇宙人の侵略も戦争もない、イカみたいな宇宙人がチョロっとでるだけなのに、なんてSFなんだろう、と。
原作は当時未読だったので、これぞセンスオブワンダーな作品だなぁ、と感心してしまいました。

作品の中でもうひとつ心に残っているのが、”悲劇的な別れが避けられないとわかっていても、その選択をするか”ということ。

主人公の場合は、娘がいずれ病気になって死ぬことがわかっていながら、それでも夫を選び、娘を産む決断をする、というラストシーンです。

自分だったら、果たしてどうするかなぁ、と。未来が予めわかっていても、その選択が自分にできるのか?
もし未来がわかる世界があるなら、そこに自由意志は存在しない、ということに言い換えられるかもしれませんが、とても哲学チックに感じました。
(ここはテネットぽいですね)

この部分が、観終わった後もずっと考えてしまって眠れなかったです。
(特に子供を持つ親の身としては、色々考えてしまう)

前述したアイデアとこの哲学チックなところの融合が本当に上手くて脱帽です。

また、原作と異なる点としては、子供が亡くなる理由が映画では病気ですか、原作は登山の事故(だったはず)なので、ここは良い改変だなぁ、と。事故よりも病気の方が、より避けられない悲劇感が出てます。

あとはオープニングとラストシーンで印象的な楽曲ですが、On the nature of daylight すごいよきです。
この映画以外にもよく使われているのですが
(シャッターアイランドでも使用)
劇伴はヨハン•ヨハンソンですが、この楽曲自体はマックス・リヒターという方が作ってます。当該曲が入っているアルバムはイラク戦争への抗議が強く影響していて、それが幾度となくリフレインする旋律で表現されている、と町山氏がラジオで言及してたような
(うろ覚え)
たしかに、何度も繰り返されるメロディは、映画のモチーフになっている”円環”を強く想起させていますよね。
Apple Musicにもあるのでぜひ一聴願います。
(マックス•リヒターの曲は安眠効果ありです)


と、色々書きましたが、宇宙人との戦争が見たい方はインデペンデンスデイをお勧めします。
(締めどうなってんだよ。。。)

追記
今また観たら、オープニングのド序盤から指輪のアップ、進む先が円環みたいに湾曲している病院の廊下、など円のイメージが組み込まれてるのに気付きました。よくできめる。
ヘイヘイ

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