低彩度の画作り、禁欲的な音楽、暗示的なカットを要所要所で用いる手法が、ストーリーの救われなさと切なさに合っていた。
本来なら色鮮やかに、ポップに映るはずのものを、全編を通してまるで誰かの思い出みたいな色使いで描いていたのは、ささやかな幸せと破滅的な未来を暗示するラストシーンで特に効果を発揮していたと思う。
あとそれが銅像であったりポスターであったりのバリエーションはあるけど、とにかく二人の関係の内容を暗示させるような小道具が画面の端々に散りばめられてて、それが多くを語らないストーリー展開といいバランスを保っていて上手いなぁと思った。
配役については、主役二人が完璧だった。この映画、目元をアップで映すシーンが多いんだけど、二人とも幼いのに目で語る演技がとてもよかった。特にエリ役の子の目は本当に綺麗。あとオスカーのお父さんがやけにイケメン。
まとめると、あるストーリーに対して、映画という表現技法がどのように寄り添っていけるかという点でとても参考になる映画だった。絶妙なバランスの切なさで成り立ってるストーリーだから、たぶん色合いのトーンでもカット割りの癖でも音楽でも、なにか一つとんちんかんなことをやってたら一気に駄作になってたと思う。
ある意味ではテンプレのような救われないストーリーなわけで、その王道な筋書きを適切な技法によって表現することで、一つの作品に仕上げるまでの技法が高かったということか。
とにかくいい映画。みんな観よう。