ジョージ朝倉による原作漫画の実写映画化。これは……評価がまっぷたつに分かれているのも頷ける映画だ。
正直、演出というか、編集というか、映画としてはかなり歪。無駄に長いシーンがあるかと思えば、変なところでブツっとシーンが切り替わるし、謎すぎるタイミングで大音量のBGMがかかるし、カメラマン役の演技とか、どう見ても妙だし(役者じゃないから仕方ないのかもしれないが)。酷評されるのも分かる。分かるんだけれども…。
私は2回も泣いてしまった。
なんだろうな。原作は未読なのだが、監督の原作に対する"想い"というのはすごく伝わってくるし、17日しかなかったという撮影期間中に、出演者もある種のトランス状態になっていたんじゃないかな?という"異様な熱量"を感じる作品なのだ。
正直、ある事件が起こるまでの中学生パートまでは私もドン引きしていて、小松菜奈と菅田将暉じゃなければ、途中で映画館を出てしまったかもしれないなという感じだったのだが、あの事件が起こり、高校生になってからグッと引き込まれた。
この映画では、夏芽とコウがお互いを追いあうシーンが頻出する。前半、中学生の2人は神々しくて、カモシカのようにまるで重力を感じさせない走り方をする。
しかし、あの事件が起きた後、コウのことを追いかける夏芽の後姿を見て愕然とした。カモシカのような軽さはすっかり消え、少しモタつい足取りは、とても人間くさかった。
そこで初めて、"神さん"に近い存在だった2人が、あの事件によってただの人間になってしまったことに気付いた。
中学生時代の会話や行動はとても非現実的で、過剰に芝居がかって見えて冷めていた私だったが、「ああ、あれはわざとだったんだな」と、ようやく腑に落ちた。そして、その後に続く夏芽と大友のシーンはとても自然で、血が通ったものだった。(重岡大毅の演技が素晴らしかった)
神に近かった2人が、ある出来事によって地上に落ち、呪いを抱えながら苦しみ、その呪いを打破して解放される。最初の方に出てきたイザナミの話(古事記)とリンクしてたのか!
火祭での菅田将暉の舞といい、「描きたいシーン」への想いが強すぎて、かなり偏った映画になってしまったことは認めるが、強烈に輝くシーンがいくつも存在することも否定できない。
全然上手ではないのに、なぜか惹かれる演奏みたいな。下手くそなのに、目が離せなくなる子供の絵みたいな。なんともいえない感覚を抱かせる作品だった。
※あと、菅田将暉と重岡大毅が良すぎて、「こりゃー、シーン長くしたくなっちゃうのもわからんでもない」という感じではあります。それが裏目に出てしまっているもったいなさ。