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フランス組曲のkojikojiのレビュー・感想・評価

フランス組曲(2015年製作の映画)
3.8
No.1637 2015年イギリス🇬🇧映画
監督:ソウル・ディブ「ある公爵夫人の生涯」の監督。

実話ではないが、実話以上に劇的な原作の誕生秘話。
原作はイレーヌ・ネミロフスキー。
1942年にアウシュビッツでその生涯を閉じた女性作家の未完の小説。彼女が娘達に託したトランクには彼女の日記が入っているものと思っていたらそれは小説だった。娘達は辛い記憶につながる日記は見たくないとトランクは長く開けないでいたらしい。そして出てきたのがドイツ占領下で生きる人達の話。
この小説フランス組曲は5部から構成予定。その1部と2部が完成しているが残り3部は未完に終わっている。
この映画はその第2部「ドルチェ」が原作となっている。

原作は終戦から60年後に娘達により出版され、大ベストセラーになったとのこと。その映画化なのだ。

物語は1940年、ドイツ占領下にあるフランスの田舎町が舞台。出征中の夫の帰りを待つリュシル(ミシェル・ウィリアムズ)と厳格な義母と暮らしている屋敷に、ドイツ軍中尉ブルーノ(マティアス・スーナールツ)やって来る。このドイツ兵に怯える二人だったが、ブルーノはあくまでも紳士的な対応を取る。しかもブルーノは音楽を愛し、毎夜ピアノをひく。その音色に魅せられたリシュルは次第に彼と会話するようになる。

 もちろん映画は二人の恋愛が基軸なのだが、この村の町長夫妻、リシェルの家の小作人との関係、そこに来たドイツ兵との確執。占領下での異常な環境が、リシュルの目を通して描かれている。一種の群像劇と言えるだろう。
 一女性の目から見た占領下と言う現実は、今まで見た戦争映画とは違った意味でリアルで、息苦しい。日常が突然戦争という環境に変わっていく瞬間を見事に描いている。確かにこんな感じだろうと思わせる。

 リシュルの義母との関係は、典型的な嫁と姑。義母役のクリスティン・スコット・トーマスが凛とした頑固な夫人にピッタリ。この夫人は自分の息子の嫁を、ある意味監視しているような立場をとっていて、二人のちょっとした会話にも目くじらを立てるような状況なのだ。そんな中で愛し合う二人の背徳の思い、しかし純愛が切ない。

 ミシェル・ウィリアムズはなんとなく地味な顔つきだが、これまで観た映画を並べるとその多彩な役柄に驚く。例えば「マリリン7日間の恋」「マンチェスター・バイ・ザ・シー」記憶に新しいところでは「フェイブルマンズ」の母親役などなどどれも全く印象が違う気がする。
そしてこの映画は間違いなく、彼女の代表作に違いない。素晴らしい演技を見せてくれた。
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