カネコ

葛城事件のカネコのレビュー・感想・評価

葛城事件(2016年製作の映画)
3.6
"その夜の侍"の赤堀雅秋監督による附属池田小事件をモチーフにした一つの家族の崩壊を描いている。

犯人の父親は団塊世代の悪い所を煮詰めたようなモラハラDV男。
一見優しく見えるけど共依存でネグレクト気味の母。食卓にはいつもスーパーの惣菜かコンビニ飯が並ぶ。
リストラされたのを言い出せない兄。
偉そうな事ばかり言って引き篭もりの弟。いずれ犯罪を犯す。

この危ういバランスが崩れた時に事件が起きるという不穏な空気が続く。

最後の晩餐の会話をしていた母子のシーンは唯一少しだけ明るいシーンだった。
鰻重がコーラになってしまったけど。

父も獄中結婚した人権家の妻も家族という言葉を何度も口にするが結局は自己中心的で家族を顧みる事はない。

死刑執行後、父に執行の報告をしに行った妻が押し倒されそうになるシーンが強烈。妻の放ったセリフが特大ブーメランだった。

崩壊した家族。父が部屋を荒らすシーン
その夜の侍のラストでプリンを被るシーンにも繋がる。悲惨な中にもシュールなコント味があって森田芳光監督の家族ゲームを思い出した。

父は絶対に体重を支えきれない木で首を吊ろうとして失敗。蕎麦を啜る。
父はあの家でずっと変わらずに中華屋やスナックで説教や悪態つきながら長生きするんだろうなと思った。

全体を通して印象的だったのは肌の湿度の表現。特に夏の場面での肌のじっとりした質感がリアルで不穏。
以前観た同監督のその夜の侍と同じ空気感を感じた。
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