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葛城事件のsobayuのレビュー・感想・評価

葛城事件(2016年製作の映画)
4.5
全員暗くて沼みたいな目をする瞬間があって、なんというか底力を感じた。特にここぞという時の三浦友和は全然瞬きしない。

その夜の侍より深遠に近づいてる感じがした。田中麗奈もよかったなあ。最初、ああいう人があんな高めのヒール履くかなと思ったけど、あれは彼女の気合いとかそういう類の現れなのかもなーとか考えながら見た。彼女にとっては信念との戦いの日々だろうし。新井浩文も私が見たことある中で1、2を争うよい新井浩文だった。あの笑顔は後味悪い。南果歩も何らか受賞してほしい。

役者の人たちが全員すごかったということはそれを引き出して撮った監督がすごいということでもあるんだろうな。邦画はつまらなくなったと言われることが多いけど、今年に入って見たロクヨン前編も海よりもまだ深くもこれもすごいよかった。邦画ぜんぜん終わってないと思います。

唯一残念と言えば、凶行の場面が誰も死ぬような怪我を負ったように見えなかったことくらい。実際の事件と同じシチュエーションである必要はないと思うけど、別に血を見せなくても凄惨さは出せそうじゃないですか。

意外なことに次男が起こした無差別殺傷事件が主題ではなかった。事件より家庭が怖い。わたしも一歩どころか半歩間違えたらこの登場人物たちの誰にでもなりえる。
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