スポック

葛城事件のスポックのレビュー・感想・評価

葛城事件(2016年製作の映画)
4.5
『10代、20代でろくに努力もせずに怠けて過ごして生きてきた馬鹿が、30歳手前で人生終わっている状態になっていることに気付いて発狂して、人生を謳歌している他人に妬み嫉みでひたすら道連れにして浅はかに暴れた。
そういう動機。
無気力でこのぼろぼろの人生は、きっと俺ではない誰かのせいで、逆境に立ち向かう心の強さは1ミリもなく言い訳ばかりが饒舌に長け、クソみたいな人間ですよ私は。』
当事者である死刑囚の本人は自由も希望もない収監されている今の耐えられない状況を終わらせたいが為に、もしくは罪を償いたいが為に早期の刑の執行を望んでいる。死刑制度反対の人権派の女性は、その死刑囚の苦しい想いとは裏腹に、自らの独善的とも思える正義感を盾に死刑囚と婚姻関係を結び、死刑囚が望まない死刑執行を阻止するためだけに利用しようとしている。
そのことで彼女を愛しているであろう彼女自身の家族を苦しめそして決別してしまい、自らの家族関係を崩壊させてしまっている本末転倒の不幸を彼女自身が家族に強いている。

その上に死刑制度反対の人権派の女性は、いま目の前で混乱した苦しみに自らの命を断とうとまでして救いを必要としている追い詰められた人間には手を差し伸べない。
それどころか救いを必要としているその人間が自らの苦しみを他人の責任にしたり、人を逆恨みして罪を犯したりせずに耐え忍んで、極限の苦しみの真っ最中の状態での出来心の間違いには『あなたはそれでも人間ですか!』と全否定し突き放して救済もすることもなく思いやりも持たない。

正義とは。
信念とは。