ガルベス

ニューヨーク、ジャクソンハイツへようこそのガルベスのネタバレレビュー・内容・結末

4.7

このレビューはネタバレを含みます

「ニューヨーク、ジャクソンハイツへようこそ」を鑑賞。
フレデリック・ワイズマン監督の最新作。
ナレーションなし、テロップなし、音楽なし、インタビューなし という独自のドキュメンタリー的手法を確立してきた巨匠の40作品目。
ニューヨークから地下鉄で30分の所にある、人種の坩堝で167もの言語が話される多様性都市ジャクソンハイツ。
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イスラムの礼拝所、移民の受け入れ相談や職業訓練、W杯に熱狂するコロンビア人が集うバー、インド人が営む理髪店、ハラールフード店の鶏の解体現場など様々な人種の住民の営みだけでなく、ゲイ・パレードやセクシャリティを差別された人による抗議デモや中高年のゲイコミュニティ
などLGBTに寛容な土地柄も映し出されていた。
最も興味深かったのは、NYの近くにあるため大資本による介入が侵食し始めてきているというくだり。家主による家賃値上げのため既存の零細商店が立ち退きを迫られ、空いたお店にはGAP等が参入。ジャクソンハイツにしかない風景が失われ、安くて便利だけどどこにでもある風景に置き換えられてしまう。家賃相場が上がると金を持った新住民が流入し、多様性が失われていくであろう未来を暗示していた。
資本の論理が土地の文化を蝕んでいく流れは見ていて切なくなるもの。経済をバカにしてはいけないが、文化や多様性を蔑ろにした社会は面白みがない。
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多様性が生み出すダイナミズムを丸ごと映し出したアメリカという国家の縮図を垣間見たかのような大傑作。
189分という上映時間だけど少しも長くは感じなかった。
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