他者に「生き方を決めろ」と言うような不倫教授はアポロンではないと思うが、教授の周りに配置されたミューズたち。恋愛詩や悲劇より、どちらかというと喜劇の方のミューズ。どうでもいい教授の痴話喧嘩にハイコンテクストな言論を織り混ぜる応酬。まったく異なるが、そこのみにて若干エリック・ロメール味を感じる。
しかし内容より形式が喉に突っ掛かる。ハンディカム、ジャンプカットによるドキュメンタリー調に反して、意図的に多用されるガラス越し反射やカットバックの違和感。逆に強くカメラを意識してしまう。ガラスの盾で守ろうとしているのか、動物園のように陳列しているのか。個人的に反射はすごく好きなのだけど、この映画のそれはあまり美しさを見出せなかった。
