ぶてぃ

Arabian Nightsのぶてぃのレビュー・感想・評価

Arabian Nights(2015年製作の映画)
5.0
ミゲル・ゴメスが映画の中に招き入れるものの豊かさと自由さ。それらに翻弄されながらの魅惑の6時間半。上映時間の長さに対する鑑賞前の不安は杞憂だった。

(ポルトガルが)死を迎えないためには、シェヘラザードのように語り続けなければならない。
ポルトガルの情勢を憂いて作ったであろう今作で語られるのは、ポルトガルの現在であり、さまざまな現実であり、人々を打ちのめすものであり、慰めるものでもある。寓話的だったりドキュメンタリー的に作られていたりするが、フィクションと現実的世界の境界はぼやけて曖昧で絡まりあっており、森羅万象が語るべき物語を持っている。(雄鶏のシークエンスが個人的には一番ツボにはまった。)語りの多彩さと編集のうまさが際立つ。

物語を召喚する装置として、一部ではメタ的に、三部では使用人に扮してミゲル・ゴメス自身が登場するのには笑ってしまった。ユーモアの人ですね。
とにかく映像が絵画のように美しく、印象的な長回しやカメラの動きがたくさんあるので、それだけでも永遠に見ていたいような気持ちになる。
オリヴェイラやアピチャッポン、ウェス・アンダーソンなども想起した。