Maoryu002

ビースト・オブ・ノー・ネーションのMaoryu002のレビュー・感想・評価

3.5
内戦下にあるアフリカの村でアグー(エイブラハム・アター)は家族と暮らしていたが、政府軍の襲撃で父や兄を殺され一人で逃走する。やがて反乱軍に捕まり、指揮官(イドリス・エルバ)に少年兵となることを強要される。兵士として戦う以外の選択肢がないアグーは殺人、略奪、レイプを目の当たりにする。

キャリー・ジョージ・フクナガ監督が内戦を生きた少年を描いた作品。

冒頭は、家族に愛され、ユーモアにあふれた少年らしい少年の日常が映されるが、すぐにこれまで何度も観た内戦の映像へと移っていく。
この作品は、部族や宗教の対立での大量虐殺ではなく、普通の少年が殺人を覚え、人間性を失っていく描写にフォーカスする。
アグーの変化に恐怖を覚えるけれど、中盤からは動きが少なく退屈だった。

それでも、野獣となった自分を、子供だった自分から客観的に語るのが、この映画のつくりのユニークなところだ。
戦い殺し続ける裏で母を求め、神に嫌われることを恐れるのだ。

イドリス・エルバ演じる指揮官のゲスっぷりも強烈。話が進むにつれて子供たちを利用して自分の欲望を満たそうという真実が見えてくる。彼こそ人間に戻る道を失った野獣だろう。

希望的なラストにはなっているけど、家族への深い愛ゆえに、強烈な憎しみで一度は野獣と化した少年は、どんな大人になるんだろうか、心配だ。
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