YLxx

ガタカのYLxxのレビュー・感想・評価

ガタカ(1997年製作の映画)
4.5
これまで観てこなかったことを後悔しました。
生まれつきの細胞で未来を決定されそれに従い生きる世界、誰もその範疇から出ようとせずレールに乗って生きる。主人公ヴィンセントは不適合者として生まれるも、大好きな宇宙に行くためならどんな努力も惜しまない、そこでたどり着いたのが適合者のIDを買うことだった。

いつこの秘密が明かされてしまうのかというドキドキ感で本編を楽しく観られるのだが、観終わった時にはそんなことも忘れメインテーマ曲の「The Departure」を聴きながら余韻に酔いしれる。


生活する上でみな大人になると自分の稼働領域を決めつけて生活していないだろうか、人を客観的評価だけで判断していないだろうか。情報が溢れるこの社会血液型、性別、年齢だけに限らず、情報とは学歴は?フォロワーは?登録者は?と多岐にわたる、そんなしょうもない価値観で判断していないか。自分の意志で判断し行動し生きているか。

アイリーンとアントンはそれを象徴するキャラクターであり、特にアントンとのラストの遠泳対決はそれが如実に表れる。地球をも出ようとするヴィンセントに対し、岸という安全地帯を求め、広い海へすら怖がり出ようしない。
アイリーンは唯一作中でヴィンセントの眼の変化に気づく、ここまで真っ直ぐヴィンセントを見てくれた人は初めてなのだが、そこにはエリート適合者という前提『情報』があったからこそだという悲しさも溢れる。
ヴィンセントとアイリーン/ジェローム/アントンこの3つの繋がりが良くできており脚本が素晴らしすぎる。ヴィンセントとアイリーンは異性としての繋がり、アントンとは兄弟としての繋がりが二人を苦しめる。
そんな中でもやはりジェロームの物語は別格だ、自分が特別な存在として育ちながらも挫折し、人生に絶望しているジェロームは自分自身と真逆のヴィンセントと過ごすことで人生の主人公になるのではなく、他人の人生の為に生きる素晴らしさに気づく。逆にヴィンセント自身も適合者として生きたことにより、他人からの愛を受け新たな世界を見る。二人の旅立ちは両者が一体となり夢を叶えた瞬間である。

正直内容は満点だが映画として画作りが雑魚すぎる、まったくわくわくしない。あとユマサーマンの演技途中までアンドロイドの設定かと思うほど酷い。
でもイーサンホークと車越しで話すシーンだけは二人ともイケメン過ぎて好きだし、私もヴィンセント・アントン・フリーマンの大ファンだ。