このレビューはネタバレを含みます
たまたま出会った男女、映画監督の男性チュンスと、絵を描いて暮らすヒジョンがたどることになる2つの物語。前半と後半で、些細な会話の違いから2通りのエンディングをむかえる構成が面白い作品です。
ホン・サンスらしい、会話が長く続きながら話が進んで行く映画です。基本は固定カメラですが、時折り挟まれる機械的なズームやカメラ移動がなんとも言えない味わい。
会話は長台詞がほとんどですし、無言の間合いもそのまま回していて、なんとも言えない妙な生々しさがあります。登場人物の会話を眺めながら、その人物たちの感情が見え隠れする面白さ、でしょうか。
さらにこの映画では前述しましたが、同じシチュエーションでの出会いから始まる男女を、少しの会話のやり取りの違いから、2通りの反応や感情が異なる様をみせてくれるので、一本の映画内で小さな世界のパラレルワールドをみてる感じが面白いです。
かと言って、前半と後半のどちらかが正しいととか間違えてるとか、そういう感じでもなく、なにか教訓めいた落とし所があるわけでもない感じで、私は会話そのものを軽くたのしみました。
ホン・サンスは音楽もつくっていて、と言っても壮大なのではなく、なんとなく印象に残る同じメロディが何度か流れます。そのタイミングや、同じメロディでもアレンジ違いとか、同じ音楽でも使い方でこんなに印象変わるんだ、という味わいがありました。
ホン・サンス、なんかどこが面白いのかつかみどころがないのですが、味わいがクセになる監督ではありますね。