世間的にも知られた映画監督で、水原市で行われる映画の特別公演のためにソウルから赴くもスタッフの連絡ミスによって予定より一日早く到着してしまったハム・チュンス。街巡りで訪れた世界遺産の華城行宮で魅力的な女性のヒジョンと偶然の出逢いを遂げた彼が、妻を持つ身でありながら徐々に彼女に心惹かれる様を描いた恋愛映画です。
アメリカで映画を学んで帰国後に手がけたデビュー作『豚が井戸に落ちた日』から国際映画祭の常連となるホン・サンス監督作品で、本作で協働したキム・ミニと現代まで続く泥沼の不倫劇に陥って韓国内で批判を浴びるもロカルノ国際映画祭で金豹賞を獲得するなど国際的な評価を獲得。後のオスカーノミニー濱口竜介にも影響を与えました。
人と人との偶然の出逢いがもたらす人生の機微を同じ人物でもわずかな違いで正しさと過ちが二重の意味で反転する二つの物語で描き、その差をホン・サンスらしいパンとズームを多用するせわしないカメラワークで捉えます。「私」映画として持てるものを余すことなく発揮して、手前勝手でも譲れぬ恋心をロマンチックに表現する一作です。
