藍色

バジュランギおじさんと、小さな迷子の藍色のネタバレレビュー・内容・結末

4.7

このレビューはネタバレを含みます

ずっと前から見たいと思ってたものをついに見れた!
「pk」を見たときにも思ったけど、インド/パキスタン問題をテーマに平和を訴える系の映画は本当に泣ける。

・お母さん妊娠中にクリケットの試合を見てシャヒーダの名前を決める→6年後、シャヒーダ親子が電車にのってて「シャヒーダーが話せるようになるために聖廟にお参りにしてるんです」って経緯をお婆さんに話す形で回想が入る。
回想での家族からシャヒーダへの愛情を見て、この子が迷子になることで話が始まるとわかっちゃいても、この子がいなくなったらどれだけ家族は悲しむだろう…って思って泣きそうになった

・スポーツとナショナリズム。インドでもパキスタンでもクリケットが国民的スポーツで人気。イギリスの影響を感じる。(旧イギリス領のスリランカでもシンガポールでも人気だし)印パ対立の元凶の置き土産…と思うとちょっと複雑な気持ちに

・シャヒーダがいなくなった後「インドにも神を信じる善人がいて彼女を助けてくれるはずだ」からのハヌマーンの祭りとバシュランギおじさんのダンスが入る演出が好き。神は神でも違う神を熱心に信じる人だった!

現実の世界ではクソみたいなことが沢山あるし、印パ戦争やその後の対立の中で悲惨なこともたくさんあったろうに、それでも信仰の善なる面を、人間の善なる面を描いて平和を訴えようとしている監督・脚本家のカビール・カーンのことを思うと泣けてしまう。

・「ラーマーヤナ」と「バガヴァットギータ」を読んでたらもっと面白かったと思う。これはインド映画全般に言えることかも…なんかヒンドゥー神話的なメタファーが入ってる気がするけど読み解けなかった。主人公の「バシュランギ」という名前がハヌマーンの別名であるところとか、ただ熱烈なハヌマーン信者であるってこと以外にもメタファー的意味があると思う。「ラーマ様万歳!」

→ハヌマーン=インド神話のトリックスター/境界を超えて変化をもたらすもの=今作のバシュランギおじさん、てことかも?

・婚約者のラスィカーがいい人だし、お父さんもいい人。「ふさわしい男になるまで結婚は認めん」といいつつ、ちゃんと半年猶予をくれて家の頭金を作るの待ってくれてるし。

「飛行機にこう書いていた。最初に自分の酸素マスクをつけろ。周りを助けるのはそれから」
飛行機の案内文を人生哲学として語るお父さん。的をいてるけど、そういう理屈を超えたところに愛はあるんだな

・ラスィカーが、バシュランギの真っ直ぐで純粋な魂を愛してるんだなってのが伝わってくる。シャヒーダがムスリムだと分かったときに「だまされた」と狼狽えるバシュランギを叱ってくれるし。
「ギータを読んだ?善良ならそれでよしと書いてる」

この精神が、のちのちパキスタンにいったバシュランギの中でも発揮されてくのもいい。夫婦は互いに影響されるし、そこにいなくてもラスィカーはバシュランギの中にいる。

「ギータってなに?映画?新作?」っていうパキスタンの記者の反応がおもしろ

・パキスタンに入って以降の展開は、ちょっとファンタジーすぎるというか、現実味がない展開が続くので、そこまでのめり込めなかった。
それ現実世界でやったら射殺されるし、バシュランギの手引きした人も巻き添え食って処刑されるんでは?って行いが色々出てくるし。
シャヒーダを送り届けてるって話に心を動かされた現地のパキスタン人がすぐ味方になって助けてくれる展開がめちゃくちゃ多いんだけど、それにそんな簡単にはいかないっしょ…って冷静に突っ込みたくなったり。

でもそもそも、インドで迷子になったパキスタン人の子供を送り返すために、ビザもパスポートもなくパキスタンに入る展開からしてファンタジーだから仕方ないかもだけど。

・全編通して歌と踊りがいい!インド、パキスタンのモスクと寺院の様子も色鮮やかで綺麗だった。緑はイスラム教で好まれる色なのでモスクはだいたい緑色してる。
チキンの歌のときに後ろで踊ってたのはインドのムスリム?男の人たちの膝下まである上着がそれっぽいなと思ったけど違うかも?

・カシミールの風景がまるでスイスみたいに美しい!インド、パキスタン、アフガニスタン、中国の国境に位置していて紛争が絶えない地域であることの悲しさが募る。

・知らなかったこと
バラモンは色白が多い。なのでバシュランギおじさんはシャヒーダをバラモンと思った(上位カーストがアーリヤ人系で、元々現地にいたドラヴィダ系が下位カーストになってるから?)

バラモンは菜食主義で肉を食べないけど、クシャトリアは肉も食べる。
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