モズク

バジュランギおじさんと、小さな迷子のモズクのレビュー・感想・評価

4.3
いい作品だった。
元は一つの国であったインドとパキスタンは宗教上の対立から分離し今でも軍事的、政治的な緊張関係にある。ムンニーことシャーヒダーの暮らしていたカシミール地方は、この対立の中心と言える地域で、そこを舞台にこの作品が作られたことは、とても意味がある。と思う。
パキスタンで2人が出会ったリポーターのナワーブが言っていた「憎しみには飛びつくが、愛には関心を示さない」という言葉に人の心の疲弊と両国の歪な関係が見て取れる。これは、現在の日本の国内外の状況についても言えて、ドキッとした。
ということで、この作品はかなり政治的な要素を含んでいる。しかし、作品の中心はバジュランギおじさんことパワンの良心と愛による行動。なので、コメディもありつつ、とても明るい作品に仕上がっている。
前半はやや冗長な演出があるし、インド映画伝統の急に歌い踊り出すのもあって、尺は長い。
しかし、どれもこれも質が高いのでとても楽しい。
特に、自然の美しさと人々の伝統的、宗教的な生活の鮮やかさは素晴らしい。
背景を知るほど深く、何度も観られる作品と感じた。
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