うらぬす

ジャッキー ファーストレディ 最後の使命のうらぬすのレビュー・感想・評価

3.7
今思うと『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』で音楽にミカ・レヴィを抜擢した誰かさんの功績は大きい。この映画を語るときに音楽に言及しないわけにはいかない、そう思わせるほど印象的な音楽。弦だけでなくフルートとヴィブラフォンが加わった空想的で浮遊感のあるスコアはあまりに素晴らしく、映画を観る前からサントラだけ繰り返し聴いていたけど伝記映画にはふさわしくないのではという不安があった。
でも実際に映画を観てみると不思議なほどハマっていて驚き。大統領夫人・母親・未亡人・ただのひとりの女性、それらの全てであるがあくまで夫を人々の記憶に留めようと努める彼女の強さ──分かりやすい剛胆さでも冷静さでもない、誰より悲しみに暮れながらも為すべきを為すその姿勢が、滑らかな音を響かせながらも一貫したトーンを持つサントラ全体といい感じに調和している気がする。映画において音楽の果たす役割の重要さを改めて教えられた。
もちろん音楽しか取り柄の無い映画では決してないんだけど(ナタリー・ポートマンの静かな情念は見物)、音楽が凡庸だったら3.1〜3.3くらいかなあ。