半兵衛

微笑むブーデ夫人の半兵衛のレビュー・感想・評価

微笑むブーデ夫人(1923年製作の映画)
3.6
『あるじ』のようになれず、ささやかな幸せを踏みにじる夫に反抗しようとしても言いくるめられてただ従うしか出来ない妻のやりきれなさと苛立ちが多重露光やスローモーションで見事に表現されていて男にとってはしんどさがあるもののなかなか興味深かった。

亭主がアンタッチャブル山崎を更に醜くしたようなおっさんで、長年連れ添った妻から見た夫はこう見えているんだろうなというのが嫌でも伝わってきた。そんな小太りおじさんが仕事や妻のまえでは威張り散らかし、何かあるとすぐに怒るなどして誤魔化す姿を通して男という器の小さい生態を描くことに成功している。一方で奥さんの方も鏡の演出などでもう若くはないことを示唆することで苦さをドラマにもたらしている。

男性の象徴のような夫が大事にする銃を奪おうとするも失敗するエピソードも当時の女性の無力さを強調する、それに対して『ソナチネ』ばりの銃での自殺を夢想することでしか反抗できない妻。

「微笑むブーデ夫人」というタイトルも映画を鑑賞すると皮肉な意味合いが強いように感じられてくるはず、何しろ笑った場面はあるけど微笑んでいるというより…。
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