Lily

さざなみのLilyのネタバレレビュー・内容・結末

さざなみ(2015年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

想像通り良かった。予告通りいうか。
6日間を描いてるだけなんだけど、詰まってる。
45年間連れ添った夫婦。
子どもはいなくて2人と犬の生活。
穏やかに仲良く暮らしてるけど、約50年前に実質夫婦?だった彼女の遺体が見つかったと連絡がくる。
過去の彼女のことを思い、とらわれる夫。突然過去の彼女のことを話され、次第にそのことにとらわれる妻。

なんというか、心情を表す描写が上手い。
観てる側も想像したり考えたりできる間がある。
生活感がいい。綺麗だけど綺麗すぎない、リアルな感じ。
60代70代の仲の良い夫婦はこんな感じで生活してるのかしら、と思えた。
登場人物それぞれの感情や言葉が、本当みたいだった。普通に生活してるとこんな感じだよねっていう。
大袈裟に笑ったり泣いたり別にしない。愚痴も言うけど我慢もしてるし、幸せだけどそれだけじゃない。

半世紀近く前の彼女、この世にはいないしもうなんの影響もないはずなのに、
もう会えなくても、遠い昔の大切な思い出を思い、心はあの頃に戻る。
毎日毎日、過去の彼女のことやその思い出を大事そうに話される妻。
出会う前の話だし、もういないし、45年間連れ添ったし、って頭ではわかっていてもね、気が狂いそうになると思うなぁ……。
知りたくないけど知らされ、知ってしまうともっと知りたくなり、知った後に知らなければ良かったと思う。
怒りや嫉妬などの安易な言葉で片付けないでほしい。
自分ではどうしようもない不安、心細さ、自分のこの45年間が本当は望まれてなかったかもしれないと思うと……。

夫も素直に話しすぎる。男性って割とそういう傾向ある気がする。こっちはそんな言葉聞きたくないってことを平気で言う。
それで、もしこっちが感じたことそのままぶつけたらきっと、怒ったり、否定したり、傷付いたりするんだよね。
「言いたいけど言えない。抑えてるのよ」って台詞が、もの凄くリアルだけどちゃんと表してるなぁって思ったし、そうしてシンプルに言葉にできるのがすごい。

それから一度不安に支配されてしまうと、男性がどれほど改心したとしても、どれだけ大事にしてくれても、気持ちがすぐに晴れることはない。
不安や不信は一度抱くと永遠に無くなることはないのかもって思う。
この人私が嫌がることするんだ、って一度知ると、またするかもしれない、本当は今も義務感があったり無理してるのかもしれない、とか思ったり。

なんか60代70代になっても、こんな風にとらわれることがあるのなら、10代20代の自分が心を乱されることがあること、おかしくないんだなって少し安心する。

長文過ぎて引いてるけど、それくらいよく考えながら見ることができる作品。
難しいことは何もない。
男性に見て欲しいって思うけど、たぶん男性は見ても響かないかもしれませんね……
逆に女のこういうところが鬱陶しいとか思われたりして。
Lily

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