グラッデン

SCOOP!のグラッデンのレビュー・感想・評価

SCOOP!(2016年製作の映画)
4.1
芸能スキャンダル専門のフリーランスのカメラマンと女性新人記者のコンビがスクープネタを求めて夜の東京を駆け抜ける。

大根仁監督の最新作。個人的に大根監督の作品は相性が良いのはもちろん、昨年のお気に入り映画だった、ジェイク・ギレンホールが凶悪犯罪専門のカメラマンを演じた映画『ナイトクローラー』にも似た雰囲気がありましたので、公開前から非常に楽しみにしておりました。

本作は、福山雅治さんを主役に据えた「スター映画」や「アウトロー映画」として見ることができれば、二階堂ふみさんによる「ヒロイン映画」として考えることができるし、そんな2人の凸凹コンビの活躍を描いた「バディムービー」とも言えると思います。

一方、写真週刊誌というメディアを取り扱った「ジャンル映画」の側面を醸し出すことで、物語が二階堂さん演じる新人が記者として独り立ちしていく「お仕事映画」へと昇華していく流れは、予告編から想像しえない展開でした。

パパラッチ・雑誌記者のリアリティさを追及した作品にも見えるのですが、実際には、登場人物や物語にはファンタジー要素を強めに押し出しながら、バックグラウンドやディティールの中に現実を差し込んでいくアプローチだったと思います。架空の雑誌の中に実名のグラビアアイドルが出てきたかと思えば、実際にあった事件を取り上げながら架空の編集会議は進められる。過去の大根監督もそうであったように、本作も虚実混同のバランス配分は非常に良かったと思います。

ただし、パンフレットに寄せられた2雑誌の編集長のコメントに代表されるように、雑誌編集部の描き方はリアリティの成分を強めに出したのではないかと。それだけに、セリフの随所で語られる雑誌メディアの立ち位置については、軽快なセリフとは裏腹に重みを感じました。

例えば『マイ・バック・ページ』の時代のように、反体制・反権力体制を打ち出し、新聞メディアにはない切り口からジャーナリズムを展開する時代も、衝撃的な犯罪事件の最前線に立った時代も終わり、芸能、グラビア、あるいはグルメといった娯楽性を押し出して何とか持ちこたえている。現実世界においても、文春の破壊力は目を引くものでありますが、実際には、他の活字メディアと同様、緩やかな撤退戦を強いられる雑誌メディアの現状が伝わるよう描写でした。その意味でも、滝藤賢一さんと吉田羊さんが演じる2人の副編集長は、そうした週刊誌の昔も今も知る編集者の役回りとして、スタンスが大きく異なっていたのは面白かったりもしました。

この他、印象に残ったのは、本作の舞台となる夜の東京の描写です。六本木に代表される煌びやかさ、それを際立たせる深い闇の存在が、東京という街の妖しげな雰囲気を醸し出します。都会ならではの洗練された街の佇まいだけでなく、その間に垣間見せる繁華街の騒々しさなんかも印象に残りました。当事者意識を感じつつ、客観性も担保できる距離感で見るという意味では、随所に出てくる「上から見る」カットが効果的に感じました。

専門誌のようなディープさ、ソリッドさに徹するのではなく、まさに本作でいうところの<総合娯楽雑誌>のような多様性を充実度のある仕上がりだったと思います。
二階堂ふみさんの『さくらんぼ』が無駄に耳から離れない感じも含めて、今回も大根監督の作品らしい余韻を感じながら東京の夜を歩いておりました。