りゅっくサック

ジョン・ウィック:チャプター2のりゅっくサックのレビュー・感想・評価

2.9
『大切な物を奪われ後手に回された男が、先手を取ってリベンジする』
そのシュワちゃん、セガール的な無敵の馬鹿さと復讐の痛快さ、泥臭いガン・フーが前作の見どころだったと思います。

今回は
『過去の約束により後手に回るしかない男が、後手に回り続けた結果取り返しのつかないことに。』
という1から10まで悪手なジョン・ウィック。

“良くしようとした結果の力及ばず”ではなく、ズルズルと駄目な方へ流されていくので
「これどうすんの?」と思いつつ120分見続けることに。
そのノイズが今作から爽快感とカタルシスを削ぎ、心が冷める原因になってしまった。

決定的なのはジョン・ウィックは殺しや死んだ妻、過去に執着し『奪われた』と被害意識を抱くと暴走する【精神年齢の幼い異常者】だということ。

オープニングで大事な車を取り返しに行くも、ボコボコに傷付けることは厭わない。
それはきっかけに過ぎず、奪われた事それ自体への怒りが抑えられないから。
おもちゃを取られて叩いちゃう幼児と同じ。

イタリア史跡でのガンファイト、街中でのそこのけバトル、鏡の間での幻想的な追撃。
絵面は良くても戦う意義がボヤけてるので、刺客を返り討ちというより過剰防衛に見えてしまう。
一般人はただの背景なので「これはマトリックスの戦いかな?」という夢オチに近い感覚に陥った。

何せ冒頭から前作に引き続いて、絶賛復讐モード継続中。
日常に戻る区切りが無いので「引退してるのにな〜」も、巻き込まれた側の火の粉払いも白々しく聞こえる。

前作のラスト“全てを終えた男の哀愁漂う背中…”
そのラストと重ねたであろう、今回の真逆の意味を持つラストは単に尻切れトンボというか。
ついバトルロワイヤルの『走れ。』を思い出した。

「あの人に会いたい、ジョン・ウィックと伝えてくれ」を何度か繰り返し
満を待して登場!ローレンス・フィッシュバーン!も
対面早々に過去をご説明いただくただの新キャラで必然性は無く
「マトリックスだよ〜?(チラチラ」がしたかっただけみたい。
いや年老いた2人は良かったけどね!

掟で人を操り、悪逆振る舞う輩がいる。
「人を踏みにじる掟なんぞ糞食らえだ」とジェイソン・ステイサムが中指立てる。
そんな明確さがあれば溜飲も下がってただろうな。
チャプター2のジョンはチャプター3に向け事態を悪化させる為に、わざとアホにされたように感じた。

ほんと良かったは良かったです。
「これは全て意図的なチャプター3への前振り」というなら、何も言いません。
パーレイです。
コンチネンタル・ホテルに逃げさせてもらいます。

次のチャプター3では敵が強大なのはわかるので、理屈という銃に爽快感の弾を込めたジョン・ウィックに戻ってきていただきたい。
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