さあこ

リップヴァンウィンクルの花嫁のさあこのレビュー・感想・評価

3.8
「リリイ・シュシュのすべて」で出会った岩井俊二監督。

始まった瞬間のあの音楽で、ああ岩井俊二だ、と思う。
リアルであってリアルではない物語。美しさと痛みと正しさと弱さを滑稽に表現しきった作品。

Coccoの歌声に鳥肌が立つ。
手を繋ぎ顔を寄せ合い恥ずかしそうに目配せをしながら歌をうたう。
あまりに脆い精神を最大限に守ることのできる小さな小さな2人だけの世界。何を疑うことも何に不安になることもない、誰にも傷付けられない不自然なほどに多幸感が詰め込まれたワンシーン。
とても、良かった。あまりに脆く、第三者のわたしは見ていられない。

黒木華は声が本当にいい。
無知すぎて無垢すぎる精神はあまりに美しく予想以上に柔軟で、いらいらと不快な気持ちにさせる。ただその正体は嫉妬以外の何物でもないんだよなあ、と。

七海の肌の白さと柔らかさを容易に想像させる女性らしい体、真白の骨ばった言動と異なってどこか緊張感の抜けない体、純白のウェディングドレスの2つの形、綾野剛の飄々とした体つき。
「名を体をあらわす」ならぬ「体は名をあらわす」かしら、なんて。

岩井俊二は蒼井優に永遠に恋をし続けるのだろうなあ。そしてきっとそれはわたしも。

まあ結論としては良いとか良くないとか、そういうんじゃなくて、岩井俊二の作品ですよと。

『この世界はさ、本当は幸せだらけだらけなんだよ』、ああ本当に、本当にその通りだね。