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リップヴァンウィンクルの花嫁のheidihykwのネタバレレビュー・内容・結末

2.9

このレビューはネタバレを含みます

デヴィッドリンチは、自作インランドエンパイアについて'"About a woman in trouble"と論じているが、本作はそれと同じ様相を呈している。

七海は人に請われるまま流される、クラゲのような人生を生きている。とはいえSNSで少し毒づいてみたり、出会い系に走ったり、変装して隣町のコンビニでバイトしたりと、一歩踏み外しそうな危うさも元来持っている。安室は「落ちる側には落ちたいという願望があるから落ちるのだ」の言葉どおり、次々にトラブルを七海に持ち込む。うますぎる立ち回りは不気味だが、概念的に彼は本作における神である。

奔放で懸命な真白を救う立場に自分がなることで救われ、蘇生した七海には、もう偽名は要らない。画面越しでしか知らない唯一の生徒には東京に来るかと問いかけ、必要な家具を選び取り、ではまたと言う安室に、握手をし別れを告げる。

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岩井俊二の透明な世界観は健在。インスピレーション源だった黒木華は実に詩的に映撮られている。錯乱するシーンも過不足ない温度感で実に見事。
しかしcocco が登場する中盤は、監督は濃&淡の顔の女子2人をドリーミーに絡ませることが本当に好きなのだなという感想しか持てず。何が七海をそこまで魅了したのか掴めなかった。coccoは好きだが、混ぜるな危険というか、映画よりはライブで歌っているところを眺めるぐらいの距離感が丁度良い。黒木華1人になってまた見られるようになり、ラストは美しい。

本作の助演女優賞はむしろ原日出子。実に場が締まりますね。
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