木曳野皐

リップヴァンウィンクルの花嫁の木曳野皐のレビュー・感想・評価

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リップヴァンウィンクル 意:時代遅れな人

ねぇ真白、君が自分を時代遅れと言うのなら、どうか私を置いていかないでくれないか。

優しさ押し付けてくる映画好きじゃないけどこの映画に出てくる真白の言う「優しい」は現代に生きる自分にとって本当に些細な事で、忘れてしまっていて、脆いから。
「優しさ」を「優しい」って思える人の事を「優しい人」って呼ぶんだと思った。
生きたいから生きてるんじゃない、死ねないから生きてるようなその人生に【真白】をひとつ。

たった一日一緒に居ただけだったけど、あの急にフッと真白がいなくなっちゃうシーン。あれ?今日の朝までは独りだったのにいつの間にこんなに仲良くなってたんだっけ?なんでこんなに不安になるの?ねぇ真白どこ?独りは寂しいよって画面が訴えてきてビックリした。(演技力諸々を褒めてる)
真白の明るさがさらにそれを加速させる。
なんでも屋、別れさせ屋、なんでもお金になる世の中はとても現代的で現実的なのに後半の真白と七海のメイドシーンはとても“ジブリ実写版”みたいな良さがあるのだ。現代的で非現実的。
とても現代的な出会い方をした真白と七海がまさかこんな風になっていくなんて、誰が想像していただろうか。
まるで出会った時からいつか離れてしまう事を知っているかのような映画の運び方、いつか知る女の友情と愛情。
口約束の意味、見えない指輪を与えた意味をどうか考えて欲しい。







(↓ネタバレ)




“時代遅れな人”だから自分を貫き真白は真白を殺した。
だけど“時代遅れな人”だから人々の優しさに触れられた。
「一緒に死んでくれる?」「うん」
私の予想でしかないけれど、きっと「うん」って優しさに満足したんだろうなぁ。
そう答えてくれただけできっと一緒に逝かない理由になった。
愛しいよ真白も七海も愛しい。
職業も過去も気にしなければ上手くいく、本当にそう思った。AV女優の真白にピッタリの弔い方だったんじゃないだろうかあれは。正解は無いけれど正解な気がする。
そして母の涙にはいつも泣かされる。

なぁ東京、君は、本当にひとりふたり居なくなっても気づかないかい?
優しさだけじゃない、人間の弱さ、不器用さ、それをひっくるめて愛せる人間がいる事、愛してもらえることがある事。
この映画を舐めてかかった180分前の私を蹴飛ばしてやりたい。


Coccoの素朴で自然で素直な演技は真白のキャラにピッタリだった。
黒木華ちゃんの演技は言わずもがな歌声にも泣かされるなんて。Coccoももちろん。
洋次郎のピアノも素敵だね。
真白のお母さん役の人、好きだった。

あーあ、なんて自分は語彙力が無いんだろう。いざ書こうとすると「リップヴァンウィンクルの花嫁」の良さを1ミリだって伝えられない。
自分の語彙の無さを呪う。
すっごいいい映画でした、ありがとうございます。
木曳野皐

木曳野皐