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凱里ブルースのkaoruiのレビュー・感想・評価

凱里ブルース(2015年製作の映画)
5.0
反復される時計と電車のモチーフ。
部屋の中のスクリーンいっぱいに通り過ぎる電車。ラストのすれ違う電車に映るナイキスト残像。ヤンヤンという名の少年、そして少女。
ビー・ガンの天才の断片が全編散りばめられており、至福の映像体験だ。

そして代名詞にもなった驚くべきワンカットのシーケンス。中国山間部、鎮遠の集落にへばりつくように生きる若者たちを撮り、そしてカメラは主人公を離れ若い女性にターゲットを移す。彼女は路地を抜け川を渡り丘に登るが微かに聞こえるバンドの音は継続している。再び川を渡り散髪している主人公の元へ戻ってくる。外連味たっぷりだが空前絶後の空間移動だ。円環の中心にはバンドの音がある。
ここでようやく主人公の過去が語られる。超絶下手なバンドに合わせて彼は歌い、散髪屋の女が凱里の街を思い涙する。
凱里に戻る列車のショットで時間の円環も閉じることになる。  
ロング・デイズ・ジャーニーは僕のこの年のベスト2だったが、今作は遥かに凌ぐ。
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