蛇らい

フェリーニに恋しての蛇らいのレビュー・感想・評価

フェリーニに恋して(2016年製作の映画)
3.2
近年でいうと、『マイ ビューティフル ガーデン』に通づる系譜の作品。そんな中でもこの作品は異質な雰囲気を醸し出していた。

「夢想家だけが唯一のリアリスト」この言葉をなぞるように物語が進んでいく。フェリーニの映画に出会い、唐突にイタリアへ旅立ち、恋人と運命的な出逢いを果たしてたくさんの人々とふれあい、一歩、大人に成長する。そんな彼女の頭の中でしか存在しないような世界が現実に広がっていて、現実と空想の世界を行ったり来たりしているような感覚になった。

正直、少し物足りなさを感じてしまった部分もある。ひとつ、フェリーニがどんな人間なのか掴みづらかった。その要因として、二十歳になるまでの成長過程が省略されていたことにあると思う。母ちゃんが観せてくれる映画の世界に幽閉されて育ったことによって、どんな影響があったのか、具体的な例を細かく見せてほしかった。そのせいで、あれ?行動力めっちゃあるじゃんとか、コミュ力も人並みにあるじゃん、社会にでてもうまくやっていけるんじゃ?みたいに感じてしまった。

この映画を観に来た人の大半は、不器用で自分の世界観を持っていて、社会に馴染めない、少し浮いた存在だけど成長していく物語を期待していたと思う。結局、元々そっち側で悠々と生きていけるタイプの人間だったのねと置いていかれてしまったのが残念だった。 それでも主人公がイタリアの観光地でキュートに奮闘していくのを見れただけでもだいぶ満足。
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