ダンガル!ダンガル!
楽曲Dangalが熱い!!
本作はアーミル・カーン主演のスポ根インド映画。彼が演じるマハヴィルは、かつてレスリングのインド代表にまで登りつめた。挑戦したかった世界大会は、「夢では食えない、それより働き口を探せ」という父親のセリフによって断念させられる。
諦めきれないマハヴィルは、その果たせなかった夢を息子に託すことにする。子宝に恵まれたものの、一向に男児は産まれない。十数年と時が過ぎ、夢は遠ざかる一方。そんなある日、思いがけない場面を目にする。長女のギータと次女のバビータが、悪口を言う男子をいとも簡単にねじ伏せたのだ。
この光景を目にしたマハヴィルは、自らがコーチとなり、親子で金メダルを取ることを決意する。
以下、ネタバレや感想を含みます。
この映画が面白くなっている最大の理由は、語り手が叔父のオムカルであるというところだ。主役のマハヴィル、ギータの壮大なストーリーを第三者が客観的に語ることで、その成し遂げたことの偉大さや、親子間の軋轢を両者の目線から丁寧に描いている。
はじめこそマハヴィルの指導は常軌を逸しており、彼女たちの意思を汲んですらない非情なものだと感じていた。
そして、実力が備わりだし、大会で優勝を重ねるギータの表情からは、それが父親の愛であると理解していたようだった。
これらの事柄は、いくら父親の教育とは言え、娘たちの意向を余りにも反故しているように見え、それにも関わらず受け入れているギータに違和感を覚えた。
しかし、それはあくまで日本人の私の目線で物事を推測った感覚であり、実際は違っていた。それを痛感したシーンが、決勝戦前夜、ギータとマハヴィルが翌日に向けて話し合いをする場面だ。(以下は本編より抜粋)
「明日の戦略は?」というギータの問いにコーチはこう答える。
「戦略は一つしかない
人々の心に残る試合をしろ
銀メダルだとやがてお前は忘れられる
金メダルだと人々に勇気を与え子供たちの希望として永遠に残る
勝利はお前だけのものじゃない
何百万もの少女の勝利となる
男より低い地位にいる少女の勝利だ
今の少女たちには家事と子育てしかない
明日試合は重要だ
敵はオーストラリア人じゃない
女を下に見る全ての人間との戦いだ」
当初はマハヴィル自身の夢だったはずの金メダル。金メダルを獲ることは、自分のためでも父親のためでもなく、インドの全ての女性の尊厳のためであると、語るのだ。
まるで彼のわがままな夢を押し付けたように見えた指導には、彼のエゴイズムは無かったのだ。「家事労働に従事させられる少女たちに夢与えるため。」どの瞬間から金メダルを獲ることの意味が変わったのかは分からない。しかし、娘と二人三脚で歩んでいく道中には、それが異常であるという『異常な世間の目』があり、嫌でもそれを感じとってきたのだろう。いつしか、その意味合いは大きなものとなり、父親の厳しい愛はギータだけでなく、インド全土に感動と勇気を与えることになったのだ。
インドの国旗が最も高くなるとき、参謀によって見ることができなかったが、インド国家が聞こえ、ギータの勝利を噛み締めるシーンが素晴らしかった。
🎵Dangal