マクガフィン

ダンガル きっと、つよくなるのマクガフィンのレビュー・感想・評価

3.6
冒頭のシーンで、父親のハヴィル(アーミル・カーンマ)のTVでオリンピックのレスリングを見ながら、自分との意見の相違でレスリングで決着を着けることをTVの実況に絡ませる模様に唸らされる。レスラーのような大男に勝つことでレスリングは力だけでなく技術が大切なこと、レスリングに対する愛情や未練、国が援助しなかったことによるレスリングに対する悔恨が滲み出る。

ハヴィルの頑固オヤジの典型のような外見が抜群によく、瞬きもしないような鋭い眼光、いかにも頑固そうなヘの字眉毛、威厳のある佇まいが説得力抜群に。何でもレスリングで解決しようとする模様は次第に笑いに変わる。
シンプルなキャラ設定も多く、特に男は口だけ男か、パワー男の両極端に。それはエンタメに特化するためなので、この作品では許容範囲内に。

ストリートのような砂でのレスリングとマットでの公式レスリングの違いも面白く、各々のレスリングの試合シーンや練習を積み重ねることで、ルールや技を何気に伝えることが上手い。特に両肩が1秒間マットに付けるフォールで勝負が決まることはレスリングが全く分からない人でも理解できるようになるのでは。

クライマックスの試合の前に父親が隔離されるシーンの演出はやり過ぎと思いきや、娘の父への愛情と信頼を残しつつも、父親からの自立や国歌で結果を表したりと熱さは衰え知らずに。男尊女卑の風習が根強いインドでの女性自立の応援メッセージにも。

140分が全く長く感じない作品のパワーと疾走感は秀逸で、胸アツ展開で軽妙なタッチの中にコミカルを程よく挟んだバランスが良いエンタメ映画は、純粋に面白かった。