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恋妻家宮本のChernoAlphaのネタバレレビュー・内容・結末

恋妻家宮本(2017年製作の映画)
1.0

このレビューはネタバレを含みます

「子供が独り立ちしてからの夫婦のあり方」「正しい者同士では時として衝突が起こるけれど、やさしさ同士ならぶつからない」など、テーマやストーリーはとても良かった。

ただ、全体的な演出のテイストは好みではなく、その度に映画の世界から現実に引き戻されてしまった。味噌汁の中から「愛」という文字が浮かび上がるような演出や、阿部寛の「鑑賞者に対する」1人語り。しばしば出てくる意識的なカメラ目線など、ある意味、独特な世界観なんだけど少しだけイラッとした。

極め付けはラストシーンからエンディングにかけてのミュージカル的な演出。例えば、舞台演劇の終演後に登場人物がみんな出てきて、主役も悪役も手を繋いで客席に向かって笑顔で挨拶することはあるけれど、あれは幕が一度降りて「劇の世界」が終わってるから成り立つと思う。そうした区切りもなしに、あのエンディングに突入するのはやっぱり違和感があった。

良かった点は小道具などの演出。昭和、平成、それぞれに合わせたクルマや服装など、うまく時代感が再現されていた。駐車場に名車CITYがさりげなく置いてあるなど好感が持てる。

同じく、自宅内の小道具もかなり凝っている印象。家具や小物など細部に至るまで「庶民感」「中流感」を出すことに成功している。食器棚の上に並べられた箱類とか、耐震用に付けたと思われる突っ張り棒など、細かすぎるけれど、それが隠し味のようにじわじわと効いている。おそらく、主演の阿部寛と天海祐希という、ある意味「濃く」「派手な」キャラクターの強さを限りなく薄めて、いかに庶民的にするか、という策のひとつなんだと思う。服装も髪型もメイク、姿勢もそのあたりを狙って頑張っていたのではないか。

菅野美穂、相武紗季に加え、佐藤二朗までベテランが脇を固めるなかでも、生徒の「ドン」を演じていた子役の浦上晟周は演技が光っていた。おちゃらけている時と、真顔になる時のギャップがいい。目力が強く、今後に期待したい人だった。
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