みきてー

裸足の季節のみきてーのレビュー・感想・評価

裸足の季節(2015年製作の映画)
4.3
久々に良い邦題訳に出会えた。いつかは終わる子供期のモラトリアム&センチメンタルが“裸足”という語感から漏れ沁みてくる。

中身はいわばトルコ版ヴァージンスーサイズ、しかし本作の方が宗教観と旧体制家族観までアプローチしていて一層二層と滋味深い。

ちょうど先日読んだ白須英子著の「イスラーム世界の女性たち」とリンクする部分もあれば、トルコって世俗主義じゃなかのかよ!?と目を疑いたくなるような旧習もあり驚く箇所も多かった。(ちなみに↑は名著、超お勧め)

監督自身が若いころ苛まれた経験から本作は出来ているという。主演の5人も5様に「思い当たる経験がある」という。そんな中で本人達が映画を通して実体験を発信することがどれだけ容易でないか、慮るだけでも気が遠くなりそうだ。鑑賞後、劇場に貼ってあった東京観光をする彼女たちのポラを見てわたしはホッとして泣けてしまった。鑑賞=追体験というのはこういう事なんだと思った。

クライマックスで映るイスタンブールの朝焼け、故郷の村の海岸と緑。美しい引きのシーンが思い出され、それとしきたりとが混然となってトルコを成しているという事実を突きつけられる。トルコはトルコのままで、未来は女性自身が選び取れるようになってほしい。グローバリズムだけが至上ではないからあくまで“選び取れる”ように。
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