りーちゃん

裸足の季節のりーちゃんのレビュー・感想・評価

裸足の季節(2015年製作の映画)
2.8

単純な青春映画とは一線を画し、5人の美しい姉妹が多くの旧い慣習の制約の中で輝きながら成長していく物語で、光の下で戯れるいくつかのシーンはかなり美しい。そして最後‥やっと自由になれるか?という映画。

呪縛された世界のキーワードは、”良妻育成工場”、”クソ色の服”、”視線だけで赤くなる乙女”。
5人の少女達が自由に憧れる姿は共感はあっても、同時に、まぁ〜旧い慣習が100%ダメ、自由は良いというものでもないし、少し違うくね?ていう思いもあります。

トルコの田舎に住むイスラム教徒の色々と、イスラムの家庭はこんな感じなのかなと驚かされる部分もあるけど、そもそも彼女達がやんちゃ過ぎるので、どこにでもある家庭の親が子どもにうるさく言う様にどんどん縛りが厳しくなったっていう節もある。

ばあちゃんの用意した服をクソ色の服と言って裾をびりびり破いてみたり、保護者の目を盗んでチンピラみたいな男と車でいちゃついたり、でも最終的にはお見合いさせられ長女次女と嫁に行く。末娘は飛び抜けて頭が良い様でアイデアを次々と炸裂させ、プチ家出したり、車の運転を近所のお兄ちゃんにこっそり教えてもらって覚えたり、お金をちょろまかして頭の中で構想している自分の未来に繋がる脱走の日?(これは私が勝手に想像)に備えて刻々と準備している。

旧い慣習から逃れ自由を求める人とは、ものすごいエネルギーと知恵をフル回転させる。いや、しかし、ここまで厳しいからこそ必死に発露させたい欲求からアイデアも出てくるのであって、初めから自由で豊かだったらこんなに才能は開発されないんじゃ?というパラドクスもある。

姉達がやんちゃはするものの、最後は嫁に行く様に、殆どの女性は慣習に従う。誰も彼も家の中で裸で踊ったり、思春期には性欲の塊みたいになったりするものでもなく、ばあちゃんが教えてくれる伝統文化を継承したり、礼儀正しく厳格な家庭で心穏やかに神様について学び心から神様に身を捧げたいと、内省的に生きる美徳もある。
読書するのが好き、刺繍が好き、慎ましやかに生きる人もいるんじゃ?小さい頃からそれが当然とされているのだから受け入れるのが自然な気がする。不自由さは自由な国を知っているから、不自由だと感じるのであって、厳しいのが普通ならそれに従う。この描き方はアメリカ、西洋側の価値観からの視点が過ぎると思った。日本人でも少し前の世代はこっち側。
しかし処女かどうかいちいち病院で確認し、初夜の後ドアの向こう側でシーツに血がついているか親が確認に来たり、父親が女を物扱いをする男尊女卑の酷い面は十分に描かれてたけど。

5人姉妹の置かれた環境は、私が鈍いのか映画の説明が足りないのか、彼女達の関係がどうもわかりにくく感じたし、ばあちゃんと父親なのか、母親は死んだのか家出したのか、父親でなく叔父さんだったらしいなど、そういう背景は早めにクリアに分からなかった自分が悪いのだが気になると集中力が削がれるのが常。
100分も無いのに、私は少し冗長で退屈に感じました。