TaiRa

ミッション:インポッシブル/フォールアウトのTaiRaのレビュー・感想・評価

-
トム・クルーズはバスター・キートンやハロルド・ロイド、ジャッキー・チェンに肩を並べるアクション俳優だな。観ていて笑ってしまう程の過剰なノンスタント・アクション。狂ってる。

トムのやりたいスタントが前提だったり、脚本も出来ていない状態で撮影に入ったり、色々とデタラメな映画の作り方をしている。それでどうやって映画を成り立たせているのか分からないが結果何とかなってる。いやなっていないのか? とにかく話は複雑で展開も次から次へと変わって行く。誰がどの組織で何の為にやっているのか分からない状態での騙し合い。アクションのつるべ打ちで感覚がおかしくなって来る異様なテンション。映画の出来としては前作『ローグ・ネイション』の方が優れているがトムの強靭度/狂人度はかなりスケールアップした。HALO降下の凄まじさも、ノーヘル・バイクチェイスの凄まじさも、ヘリ操縦アクションの凄まじさも、どれもこれも凄いのだが一番感動したのはトムの全力疾走。56歳があれだけ走るとそれだけで感動。背筋をピンとさせた「トム走り」の姿勢も美しい。ビルの飛び移りで足首を骨折しても壁をよじ登り走り出す瞬間が映ってるのも凄い。6作目にして改めて妻ジュリアをフィーチャー。指令テープのカモフラージュに『オデュッセイア』。英雄オデュッセウスが妻ペネロペに再会するまでの物語。引用はアクションにも。監督も明言しているクロード・ルルーシュの『ランデヴー』や『フレンチ・コネクション』を参照したパリのカーチェイスが凄い。トラック、バイク、車と乗り換えての三段回。特に最後のイーサンとイルサのチェイスは音楽もつけず走行音だけを聴かせるストイックさが最高。イーサンとイルサの並木道でのショットも美しい。前2作のロバート・エルスウィットに代わり撮影を務めるのは『エクス・マキナ』などのロブ・ハーディ。光の扱いが特徴的。敢えて欠点を言うならジェレミー・レナーの不在か。中間管理職の彼がいない事もあってチーム感は減退した。

クリストファー・マッカリーにはもう一本くらい撮って欲しいけど、完全にアドレナリンジャンキーなトムとそれに付き合っちゃうマッカリーが、より過激なアクションに手を出した挙句、撮影中にどっちかが死ぬんじゃないかと不安。あと撮影前に脚本書いておけって。
TaiRa

TaiRa