ある悲劇のせいで心を通わせることのできない夫婦と、帰ってこない父親を待ち続ける少年が、夏休みの交流を通じてお互いの困難を克服していく様子を描いた、メアリー・アグネス・ドナヒュー監督のハートフルドラマ映画。ジャン=ルー・ユペール監督の映画『フランスの思い出』のリメイクであり、当時実際の夫婦だったドン・ジョンソンとメラニー・グリフィスが田舎町に暮らす夫婦を、その夫婦にあずけられる少年をイライジャ・ウッドが演じている。
『特捜刑事マイアミ・バイス』や『刑事ナッシュ・ブリッジス』で個人的には大好きなドン・ジョンソンの数少ない主演映画ということで鑑賞したが、とてもとても心に染みる掘り出し物の映画であった。ストーリー的にこうなることはわかっているとはいえ、なかなか感動的である(歳をとって涙腺が弱くなったせいもある)し、お互いに父親に会えない寂しさを抱える少年と隣の家に住む少女が心を通わせていく様子も印象に残る。元のフランス映画は未鑑賞であるが、アメリカ的スケールの大自然の中でのアメリカ的おおらかさが良く似合う脚本なのかもしれない。
もちろん、出演者たちの演技に依るところも大きいであろう。ドン・ジョンソンは刑事役とは違ったキャラを好演していて好感が持てる。この頃は、マイアミ・バイスが終わって映画に主軸を移そうとしていたことを考えると、とても良い役だと思うのだが、世間的にはあまり評価されなかったようなのが、実に残念である。でも、映画での仕事があまり成功しなかったことでナッシュ・ブリッジスが誕生したことを考えると、ちょっと複雑な気持ちであるが。そして、傷ついたまま、夫に心を開くことが出来なくなってしまった妻を演じるメラニー・グリフィスの迫真の演技がこれまた素晴らしいし、魅力的である。もちろん映画と現実が異なることはわかっているが、こんないい夫婦が実生活では別れてしまったのは残念でならない。
少年・少女を演じた子役のイライジャ・ウッドとソーラ・バーチの演技も秀逸だった。少年ウィラードなしに本映画は成立しないので、これだけの演技ができる子役が選ばれたのは当然であるが、ソーラ・バーチのちょっと変わり者の少女の演技も、本作にさらなる味わいをもたらしている。
心が温かくなる映画を見たいときにおすすめである。