半兵衛

セイント・クララの半兵衛のレビュー・感想・評価

セイント・クララ(1996年製作の映画)
3.5
世紀末という舞台で超能力少女と不良少年の恋が繰り広げられるというゲームやアニメでありそうな展開が、イスラエルというお国の風俗や事情が絡んで何とも不思議でとらえどころのない独特なファンタジーに。でもそんなアメリカや日本とは違う様式が妙な魅力を放ち捨てがたいのも事実。

超能力を使ってのカンニングでクラス全員百点という冒頭からおバカな学園コメディになるのかと思いきや、超能力を失っても恋をするかで悩む少女クララと彼女に恋する不良少年というボーイミーツガールものへ。でもどんな不安な状況にあっても愛を貫く二人の結末は政治が不安定になり最悪な状態になっても人間を愛するんだという強いメッセージ性が感じられて深い余韻を残す。

実質的な主人公である不良少年が当初は女性かと勘違いするくらいビジュアルが綺麗で整った顔立ちをしており、ジェーン・バーキンによく似ているのも美女としての雰囲気を増幅している。対するクララは可愛いけれど普通のビジュアル。

KGBやベトナム、アメリカといったバックボーンが登場人物から語られるところにイスラエルの複雑な歴史が垣間見れて興味深い、でもそんなことを気にせず逞しく生きていこうとする彼らの姿勢は見習いたい。

エディット・ピアフと寝たことを自慢する校長は主人公たちの敵になると予想としたらまさかの優しく見守るポジションに、逆に当初親友であった不良仲間はある出来事から主人公と仲違いしていく。

宝くじを超能力で当てるという誰しも夢想する使い方を実践した少年の父親である刑事の結末に爆笑、世の中は悪いことはなかなか出来ない仕組みになっているな。
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